パワハラ防止法概要その3(パワハラの取り組み例)

1.事業主が講じるべき措置の取組例

厚生労働大臣に指針において、事業主が講じるべき措置について、以下のような具体的な取組例が記載されています。

①ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発

職場におけるハラスメントの内容及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の事業主の方針等を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

○取組例
  • パワハラ講習会就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、事業主の方針を規定し、当該規定と併せて、ハラスメントの内容及びハラスメントの発生の原因や背景等を労働者に周知・啓発すること。
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等にハラスメントの内容及びハラスメントの発生の原因や背景並びに事業主の方針を記載し、配布等すること。
  • 職場におけるハラスメントの内容及びハラスメントの発生の原因や背景並びに事業主の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
  • (妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントへの対応を行う場合)
    事業主の方針と併せて制度等が利用できる旨を周知・啓発すること。
②行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発

職場におけるハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

○取組例
  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、ハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
  • ハラスメントに係る言動を行った者は現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、それを労働者に周知・啓発すること。
③相談窓口の設置

相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。

パワハラ・セクハラ相談○取組例
  • 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
  • 相談に対応するための制度を設けること。
  • 外部の機関に相談への対応を委託すること。
④相談に対する適切な対応

相談窓口担当者が、相談の内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

相談窓口のおいては、被害を受けた労働者が委縮して相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。

○取組例
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
  • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。
⑤事実関係の迅速かつ適切な対応

事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

○取組例
  • 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。
  • また、相談者と行為者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。
  • 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、労働施策総合推進法第30条の6、男女雇用機会均等法第18条又は育児・介護休業法第52条の5に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねることも考えられること。
⑥被害者に対する適正な配慮の措置の実施

職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。

○取組例
  • 事案の内容や状況に応じ、以下の対応を行うこと(パワハラ、セクハラの被害者への対応を行う場合)
    事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。(妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントへの対応を行う場合)
    被害者の職場環境の改善又は迅速な制度等の利用に向けての環境整備、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、行為者の謝罪、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等によるメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
  • 労働施策総合推進法第30条の6、男女雇用機会均等法第18条又は育児・介護休業法第52条の5に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。
⑦行為者に対する適正な措置の実施

職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、速やかに行為者に対する措置を適正に行うこと。

○取組例
  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。
  • 労働施策総合推進法第30条の6、男女雇用機会均等法第18条又は育児・介護休業法第52条の5に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。
⑧再発防止措置の実施

改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
なお、職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。

○取組例
  • 職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の事業主の方針及び職場におけるハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針、妊娠・出産や育児や介護に関する制度が利用できる旨を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
  • 労働者に対して職場におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。
⑨当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知

パワハラ・セクハラプライバシー職場におけるハラスメントに関する相談者・行為者等の情報はその相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又はそのハラスメントに関する事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。

なお、このプライバシーには、性的指向、性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれること。

○取組例
  • 相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応すること
  • 相談者・行為者等のプライバシー保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
  • 相談窓口においては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。
⑩相談、協力等を理由に不利益な取扱いをされない旨の定めと周知・啓発

労働者が職場におけるハラスメントに関し、事業主に対して相談したことや、事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決援助の求め、調停の申請を行ったこと又は都道府県労働局からの調停会議への出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

○取組例
  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、労働者が職場におけるハラスメントの相談等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発すること。
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、労働者がハラスメントの相談等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布すること。
⑪業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの発生の原因や背景となる要因を解消するため、業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講ずること。(派遣労働者にあっては、派遣元事業主に限る)

○取組例
  • 妊娠等した労働者の周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うこと。
  • 業務の点検を行い、業務の効率化などを行うこと。

2.ハラスメントの防止のための望ましい取組例

厚生労働大臣に指針において、各種ハラスメントを防止するための望ましい取組について、以下のような具体的な取組例が記載されています。

①各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備

職場におけるパワハラ、セクハラ及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、それぞれ又はその他のハラスメントと複合的に生じることも想定されることから、あらゆるハラスメントの相談について、一元的に応じることのできる体制を整備すること。

○取組例
  • 相談窓口で受け付けることのできる相談として、パワハラのみならず、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等も明示すること。
  • すでに設置されているセクハラの相談窓口が、パワハラや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等の相談窓口を兼ねることとし、全ての労働者に周知すること。
②職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組

職場における、パワハラの原因や背景となる要因を解消するため、コミュニケーションの活性化や円滑化のために研修等の必要な取組を行うことや適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組を行うこと。

○取組例

パワハラ・セクハラミーティング(コミュニケーションの活性化や円滑化のために必要な取組)

  • 日常的なコミュニケーションを取るよう努めることや、定期的に面談やミーテイングを行うことにより、風通しの良い職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化を図ること。
  • 感情をコントロールする手法についての研修、コミュニケーションスキルアップについての研修、マネジメントや指導についての研修等の実施や資料の配布等により、労働者が感情をコントロールする能力やコミュニケーションを円滑に進める能力等の向上を図ること。

(職場環境の改善のための取組)

  • 適正な業務目標の設定や適正な業務体制の整備、業務の効率化による過剰な長時間労働の是正等を通じて、労働者に過度に肉体的・精神的負荷を強いる職場環境や組織風土を改善すること。
③労働者や労働組合等の参画

雇用管理上の措置を講じる際に、必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めること。(労働者や労働組合等の参画を得る方法として、例えば、労働安全衛生法に基づく衛生委員会の活用なども考えられます)

厚生労働省では、平成28年度働きやすい職場環境形成事業において、職場のパワーハラスメント対策を行っている企業を取材し、「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」を作成しました。ここに紹介されている50事例は、どれも参考になるものですので、ぜひ自社の取組みの参考にしてはいかがでしょうか。

厚生労働省HP

職場のパワーハラスメント対策取組好事例集(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/doc/職場のパワーハラスメント対策取組好事例集.pdf?v=171006)

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